ずっと嫌いだった彼女と仲良くなれた話
私には嫌いな女性がいた。
彼女の一言ひとことが
ものすごく腹立たしいのだ。
そんな彼女との初めての出会いは
物心ついたころ。
……長い。実に長い。
不思議なのは
彼女は気づけばそばに居るのだ。
気配を感じさせず
急に現れて話しかけるものだから、
ますます腹立たしい。
彼女のどんな一言に腹が立つかって?
例えを挙げましょう。
「●●ちゃんって美人だし可愛さもあるし、
しっかり者だけど甘えるのも上手だよね〜!」
「▲▲さんって、仕事が速いね〜!」
「あっ!くん、今日もみんなに笑顔で挨拶してるね〜!」
などなど……
そう、人の話ばかりなのだ。
それを聞いた私はいつもムカムカ。
「あーそうですね。どうせ私は違いますよ〜。」
「私は仕事が遅くてすみませんね〜。」
「はいはい、私はできてないですもんね〜。」
と流してはみるものの
しばらくムカムカが取れないのだ。
しかも、私の返答に対して
彼女はなんのリアクションもしない。
(あーーー!もう!なんなのよ!)
ある日、苛立ちMAXになった私は
彼女が現れるたびに追い払い、
側に居ても気づかぬフリをしようと決めた。
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それからどれほどの年月が経っただろう。
変わらず、彼女は私のそばに居る。
変わらず、人の話をよくする。
でも、そんな彼女が今は愛おしい。
変わったのは、私。
彼女の存在を認め、受け止めている。
やっと気づいたのだ。
人の話ばかりする彼女だが、
思い起こせば悪口は聞いたことがない。
むしろ良いことしか言っていない。
(そうか、彼女は“人の良いところを見つけるのがうまい”んだ。)
(その良いところは、実は私が良いなと思っていること……)
(私がなりたいと思っている自分像……)
(「私にもなれる」と気づかせてくれているんだ!)
彼女の名前は、シットちゃん。
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ずっと嫌いだった
自分のなかの「嫉妬」と仲良くなれた
というお話でした。